ダイカスト金型
アルミダイカスト金型の長寿命化には熱処理が重要

はじめに、アルミダイカスト金型は鋳造中の加熱、冷却の繰り返しによる熱影響、鋳造時における圧力、
金型の形状・材質、焼入れ焼戻し条件、表面処理方法、機械加工などが複雑に絡み合ってヒートクラック、
溶損、焼付きなどの破損が生じます。このような破損要因の中で、焼入れ焼戻し、表面処理の方法は非常に
重要視されます。
そんなアルミダイカスト金型には、合金工具鋼の熱間金型用鋼がメインで、大型部品も多く過酷な衝撃に
耐えられる強度が要求されるため、炭素量0.6%以下のSKD-61やSKD-61の改良鋼種が広く使用されています。
そうした金型鋼の熱処理は、材料の特性や機械的性能を有効に発揮させるうえで非常に重要な技術であり、
熱処理の良否で金型の性能は大きく異なります。つまり、高級な材料を使用した金型でも適切な熱処理を
施さなければ、鋳造時におけるトラブルの発生原因になる恐れがあります。
そこで、ダイカスト金型向けエジソンハード処理(EH-H処理)と弊社グループ会社のリヒト精光株式会社
自社開発炉(エンジン駆動式真空加圧ガス冷却炉・高効率真空加圧ガス-油冷却炉)による焼入れを組み合わせて
処理することにより、表面処理の特性を活かしながらさらなる金型寿命の改善に貢献しています。

EH-H処理とは

アルミダイカスト金型仕様でアルミの耐溶損・耐ヒートクラックを目的としています。
通常EH処理で形成される窒化層の表面に1~3μmの酸化被膜(マグネタイト(Fe3O4)酸化膜の改良膜)で覆う処理をエジソンハード・ハイパー(EH-H)と呼んでいます。

Black膜自体は柔らかく、300~350HV程の硬さです。
その構造から、離型剤を最初に綺麗に塗布してBlack膜内に浸透させる事で、離型効果を発揮し溶湯アルミ材との親和性を阻害することで早期焼付きを防止します。
EH-Hのイメージ
Black膜のSEM画像 倍率×10000
優れた耐ヒートクラック性

3層構造を持つBlack被膜は、ヒートクラック(チェック)の発生原因である、低サイクル熱疲労の軽減や、アルミ材付着(焼付き)防止に効果があります。

特に溶損やヒートクラックがひどい部分にはWC+α(タングステン+α)の被膜型肉盛りを施行しEH-H処理を行うことができます。

ご要望によっては肉盛りの面粗さを変えることで離型性の改善が可能です。

EH-Hの外観写真
溶湯アルミによる浸食試験データ

試料:SKD-61(48HRC)φ8X100L

  1. ①焼入れ・焼き戻しのみ(表面処理なし)
  2. ②塩浴窒化処理
  3. ③イオン窒化処理
  4. ④EH-H処理
  5. ⑤PVC-TiN処理

試験条件:760℃の溶湯アルミ(ADC-6)
25scc浸漬⇔大気冷却 5scc 200サイクル各試料に離型剤を塗布

耐ヒートクラックの比較データ(鋳造メーカーA社殿の800tクラスの入子の場合)
従来の塩浴軟窒化とEH-H処理との比較

材料:SKD-61 ESR材

製品A
EH処理をした6次型は15万ショット時点で修正無し
クラック発生状況は塩浴軟窒化と比較すると、発生本数が少ない(1/2程度)
製品B
EH処理をした製品Bの2・4次は10万ショット時点で修正無し
クラック発生状況は塩浴軟窒化と比較すると、発生本数が少ない(1/4程度)
※3次型は約10万ショットでクラック溶接修正を実施
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